鍼の(奥)深さを知る人よ

鍼について思うことを少し書いてみました。

2019年11月20日(水)

こんにちは、和歌山県橋本市を拠点に活動しております蓬庵(よもぎあん)のワダです。ブログをご覧いただきありがとうございます。

鍼の奥深さを考える

鍼の(奥)深さを知る人よ

知り合いの先生の投稿に刺激されて、私も少し鍼について書きたくなりました。

何かひとつのことに特化して極める、また何か制限の中で極めるというのも大事です。

ぜひ上記の記事も読んで読み進めてもらいたいのですが、実は私は彼とクラスメイトで気胸の件から肩背部の刺鍼をびびってしまいできなかった時期が長くありました。

またこの件はタイミングをみて、その先生とも意見を交わした上でブログに書いてみたいと思います。

今もあまり肩背部は刺しません。そのことから刺さない鍼のテイ鍼を勉強するきっかけになりました。なのでそういった制限も大事だと思います。

今回は九鍼という複数種類ある鍼の多様性の側面から、広く鍼のことを知るという方法もあることも少し書いてみたいと思います。

古代九鍼

古代の鍼に複数の種類があったとされ文献に図が記載されており、近代では古代九鍼と言われたりしています。

残念ながらその多くは伝承されず、本来どのように使われていたのかがわからない鍼もあります。

今は髪の毛のように細いゴウ鍼といわれる鍼をよく使いますが、江戸期の文献によるともっと太い鍼を使っていたこともうかがえます。

また古代の中国においても今のように細く丈夫な鍼を作ることは困難だと思いますので、今よりも太い鍼が使われていたのではないかと想像します。

学生のときに、いつになったら九鍼を教えてもらえるのかと思ったら「九鍼なんて今は使う先生はいない。」といわれて落胆したのを覚えています。

しかし柳谷素霊先生を筆頭に平成にかけて九鍼、また夢分流の打鍼が再考される機会ができ、少数ですが特殊な九鍼や打鍼を使いこなす先生もいるのが事実です。

古代九鍼
破る鍼‥鈹鍼(ひしん)、鋒鍼(ほうしん)、鑱鍼(ざんしん)
刺さない鍼‥圓鍼(えんしん)、鍉鍼(ていしん)
刺す鍼‥圓利鍼(えんりしん)、毫鍼(ごうしん)、長鍼(ちょうしん)、大鍼(だいしん)

鍼灸重宝記綱目  「京都大学附属図書館所蔵『富士川文庫』より

『鍼灸重宝記綱目』(京都大学附属図書館所蔵『富士川文庫』)より九鍼図を抜粋しました。画像はクリックで大きくなります。

太い鍼や長い鍼は必要か?

私が資格をとって10年ほどになりますが、その頃にはすでに優しい鍼、痛くない鍼というようなキーワードをよく聞くようになり、鍼の太さも細い01番、02番、03番とより細いものが登場しました。

細い鍼、刺すカ所は少なく、刺す深さは浅く(もしくは刺さない)が美学のような雰囲気があります。

もちろん安全で少ない刺激で効果をあげられるのが理想だとは思いますが、それだけでは対応するのが難しいものがあるというのが事実だと個人的には考えています。

浅い鍼で万能になおせる達人もいると思いますが、腰の深いところに原因があるような腰痛では、やはりそこに刺した方が早いものもあると思います。

ひとつのことで達人を目指すよりも、初学の頃はできることを増やし選択肢(引きだし)を増やす方が近道だと思います。その中で自分の得意分野を極めていくことも大切です。

時代とともに変化はするものの、やはり古来にそれだけの種類があったと言うことには、それだけの意味があるからだと思います。

またそれらを知ることで技術と知識の幅、鍼の奥深さも広がります。ですので、なかなか機会は少ないですが特殊な九鍼も学ぶことも大事だと考えます。

実際に体験する

太い鍼や長い鍼はインパクトが強いので鍼灸師であってもみたらビックリします。そのインパクトから敬遠して使わない先生も多いです。

でも実際に受けてみると随分と印象が違います。私は学生のときから少し触れる機会があったので、他の先生よりは抵抗がなかったからかもしれません。

今日も30番(ステンレス)という通常に使う鍼よりも少し太いものを自分の足で練習しました。これも上手に刺すとほぼ無痛で刺すことができます。

大鍼

普段に使う鍼が一番下です。今回に練習で刺したのは一番上の鍼です。

鍼 大鍼 員利鍼の画像

頑固な腰痛など、細い鍼でアプローチするよりもこういった少し太い鍼や以下のような員利鍼(えんりしん)が良い場合もあります。

員利鍼(えんりしん)

嫌だと言う人に無理に使うことはありあせんが、患者さんは「治るのであればどんな方法でも良いのでやってください。」という方も多いです。

巨鍼 長鍼の画像

実際に自分で受けてみると良いと思います。太い鍼や長い鍼も見た目ほど怖いものではありません。

何でもできた方がいい

私は施術で使うかどうかは別にして、できないよりはできた方がいいのではないかと思います。

・できるけどやらない → やった上で否定する

・できないからやらない → やらないで否定する

このふたつは大きくことなると思います。やった上でやらないという選択はありだと思います。

(東洋医学や古典もやらずに否定する鍼灸師が多いですが、もったいないなぁーと感じてます。やった上で役にたたないと言っている先生には、否定していてもそれだけの経験値はきちんと入っています。後者の先生の役に立たない発言は鵜呑みにしてはいけません。)

またひとつ前の投稿でもかきましたが、鍼灸にはイメージや意識も大きく関係します。経験値の幅というのは鍼を刺すときの効果にも関係します。

太い鍼の経験がある人はその意識を細い鍼でものせていけますし、深い鍼をできる人はその意識を浅い鍼や刺さない鍼をするときでものせていけます。

細い鍼でも太い鍼のような効果、浅い鍼でも深い鍼のような効果というとわかりやすでしょうか。

ですので刺さないテイ鍼を極めたいという先生こそ、深い鍼や太い鍼も経験された方がいいと思います。

経験値の多さというのは、鍼の奥深さとなり施術の効果に大きく影響します。

必要に応じて必要な鍼の施術ができることは大事だと思いますし、同じ1本の鍼の効果や深さを高めるために私も練習しています。

まだまだ私も太い鍼や長い鍼は使いこなせるところにいたっていないのですが、鍼の奥深さにもっと気づけるように努力したいと思います。

鍼の(奥)深さを知る人よ

タイトルとURLをコピーしました