てい鍼ワークショップ余話

東京でのワークショップを終えて思ったことを書きました。

2019年7月4日(金)

こんにちは、和歌山県橋本市を拠点に活動しております蓬庵(よもぎあん)のワダです。ブログをご覧いただきありがとうございます。

てい鍼ワークショップ余話

出会い

気づけば蓬庵で最初にやったプレワークショップを除いて3回、東京で2回のワークショップが終わりました。

SNSの影響力というのはすごいもので、広告などをいれたわけではないですが、毎回ほぼ定員の人数が集まりました

近隣の大阪府や奈良県だけでなく、東京都、愛知県、福岡県、三重県、兵庫県、京都府からも蓬庵にいらしてくれました。

そのほとんどの先生や学生が初対面という状態で、多くの先生とお知り合いになれたのも嬉しいことでした。

偶然に集まった参加者同士も非常に親しくなることもあり、開催してよかったと思うところです。

迷い

すでに7月28日にも蓬庵でのワークショップが決まっているのですが、当初はこのように何回も開催されることになるとは思ってもいなかったのです。

そして開催することが良いことなのか、どうなのかという迷いもあったのです。

参加者に満足してもらえるのか、関係法規に抵触しないか、作成時にケガをしないか、鍼の職人さんに失礼にならないか、いろいろ考えるわけですが、ワークショップを応援してくれる同期生や先輩の先生もおり今にいたっています。

かつての鍼師は、今以上に鍼への強いこだわりをもっていたと思います。流派や先生によりオーダーメイドで鍼を注文していたような時代もありました。

今は使い捨てのディスポが主流となり、鍼メーカーをこだわって選ぶことがあっても、オーダーメイドで注文する先生は少数となっています。

そういう意味では自分で作ることに興味をもつのは大事なことだと思います。

東京

正直なところ、東京での2回のワークショップが無事に終わってやれやれな感じが強いです。やはり知らない場所、知らない先生とやるというのはすごく緊張しますし心配なことも多くありました。

幸い2回とも素敵な参加者の方にめぐまれて、とても楽しく充実したワークショップになりました。

ただ、時間、経費(新幹線の交通費は除く)、準備、心配事、すべて蓬庵でしたときの2倍ほど必要となりました。

1回目は4時におきて5時の電車、帰りは東京を19時にでて24時に帰宅というハードな日程となりました。

学生さん用の資料の準備、新幹線以外の不足の交通費、2回目は宿泊としましたので宿泊費や食事の費用も必要となります。皮算用だったので、自分が外部にいってワークショップをやるというのは大変だというのがよくわかりました。

場所の問題も行ってみないと確認できないので無事にできるのかとドキドキでした。天候や部屋の温度も気になっていましたが、雨・曇りだったこともありガレージでの作業や実技も快適にできました。

心配がどの程度だったかというと、舌が3週間前から地図舌になる程度です(笑)

地図舌とは舌のコケが地図のように一部が落ちてしまうことです。陰の不足やストレスが強いときにおこることが多いです。

それでも東京にも行って良かったという気持ちが強いです。

多くの方がアンケートに無理矢理に書かせたような嬉しいコメントを頂くので、それが励みになっています。

また参加者の方が目を輝かせながらワークショップに参加されているので、本当にそうなんだろうなと感じています。

鍼灸はとても面白い。また教科書にのっている東洋医学もきちんと臨床で使える。それを感じてもらえたら嬉しいです。

てい鍼は買った方が品質がいい

まず最初に参加者にも素直にいいますが、てい鍼は市販のものや職人さんが手作りしたものを買った方が安定していて使いやすいです。

はい、これが事実です。

毎日のように作っている職人さんの鍼、工業用の精密な機械で作られる鍼、これにはじめての人が家庭にある簡易の電動工具で作るものが品質として勝つのは到底無理です。

とくに尖端がとがったスリオロシのものは作るよりも購入をおすすめします。

そして私がワークショップで使っている素材は、元になる金属をプレスして引き延ばすような形で成形されているので素材として安定していません。

こだわるなら完成したものから鋳造をしてコピーを作ってもらうのがよいと思います。今は1本からでもやってくれるところがあります。

Myてい鍼の魅力

作った方のあいだで、それを「Myてい鍼」と愛着をもって呼ぶ場合があります。

たしかに世界にひとつだけのオリジナル品ですから、市販されたものとはまた違った思い入れができます。

結論として品質は市販のもにおとりますが、決して施術の効果が低いということでもありません。

希望の長さ、太さ、形、材質で作るので手になじみやすく、自身の施術にあったものとなります。手作り特有のクセがでる場合もありますが、それもうまく工夫して使うことが作ることの楽しみでもあります。

また作り方を覚えると、低コストで作成することができます。

※しかしそれが販売や製造が目的となると、医療機器の製造許可、販売の許可が必要となりますので、自己責任において個人での使用範囲においての使用としてくださいと、和歌山県の薬務課より助言を頂いております。

作成はやらない方がいい

またまたネガティブなことをいうと、むやみに自分で作成することはオススメしません。

その理由は手をケガしたら仕事に支障がでるからです。このリスクは非常に多いです。

少人数での開催にしているのは目が行き届く人数にしているからです。今のところ30人近くとワークショップをしてきて、大きなケガというのはありませんが、摩擦により熱くなった素材で軽く火傷をした方がいました。

なのでグローブは必須です。また作業に自信がない方は、素直にギブアップを言って頂くようにお願いしています。

なので、手のケガのリスクがあるので決して作成はオススメはしません。ワークショップでは十分に安全に配慮をして注意を促しますが、自己責任であることを作業前にお伝えします。

「それでも作りたい!」という方には、作るだけの価値があると思います。

てい鍼は万能ではない

はい、またネガティブな発言に感じる方がいるかもしれませんが、てい鍼が万能というわけではありません。これも座学でお伝えします。

刺さない鍼にはその鍼が得意とする施術の領域があります。その分野でうまく使ってあげることが大切です。

主に「気」の領域を得意とします。他のものはお灸であったり刺す鍼を使った方が有効な場合も多いです。

質問も多いのですが、私も刺さない鍼だけで対処できるものはそれだけでしますが、多くは刺す鍼もつかいますし、必要があれば腰なんかでは3寸の長い鍼なども使います。

どの施術が一番に有効かできめています。なので刺さない鍼が大好きな私ですが、決してそれだけでどうにかしようとかは考えていません。

達人の先生で何でも刺さない鍼だけで施術する先生もいるかも知れませんが、あれは熟練された達人の技なのでそう簡単には真似できません。

鍼医(ハリイ)ポッターと魔法のテイ鍼

てい鍼は刺さないタイプの鍼なのですが、どうも魔法の杖のように思っている方もいるようです。

たしかに魔法のようにみえる使い方もできなくはないですが、それは基礎となる鍼の技術・知識・理論・経験にもとづいたものとなるので、呪文をとなえて鍼をふりまわすだけでは何もおこりません。

よく魔法がでてくるファンタジーでも、見習いの魔法使いの熱意・イメージ・経験がたりなくて、うまく魔法が使えないというシーンがあったりしますが、勉強や人生経験をつむことで魔法が使えるようになるというのは、ある意味では似ている部分もあると感じます。

ただ、ハリ師は「魔法使い」ではないことを念頭においておく必要があります。きちんと鍼という道具を使った施術することを大事としてください。

自身も情報を更新

今回の東京のワークショップでは東京に宿泊にしたので、翌日に私がテイ鍼の魅力や鍼灸の面白さを学生のときに教えてもらった先生に時間をつくってもらいお会いできました。

ワークショップの実技でやっていることのベースとなる部分を教えてもらった先生です。

学生の時はその不思議な刺さない鍼の効果を理解できず、魔法のようにしか見えませんでしたが、数年間にわたって臨床の中で理解を深めていきました。

新しい理解もあれば、やはりそうなんだと確認できた部分もあったりと、情報を増やすことができました。

九鍼のはなし、古典の「鍉鍼者、鋒如黍粟之鋭、主按脈勿陥」、この「陥」をどう理解するかなど勉強になりました。

小針刀(しょうしんとう) 画像

お店があくまでの時間を渋谷のあるベンチに座って待っていたのですが、小針刀(しょうしんとう)という針先がマイナスドライバーのように平べったくなっている針は受けたことがないというはなしをしていると、その数分後には鞄からガサゴソと取り出し私の腕に刺さっていました(笑)

そういう先生たちに囲まれて学生時代を過ごしたので今があります。

てい鍼だけじゃない

もちろん、てい鍼という道具を使うワークショップなのでそれを使うのですが、それを教えたいわけではありません。

限定的なものでなく、鍼灸の施術、東洋医学の世界を大きく伝えています。

実技でやっていることは、日頃の臨床に活用してもらえることに配慮しているので、実技でやったことを他の道具でやってもいいんです。活用できることは今やっている理論のやり方に応用してもらってもいいんです。

もちろん道具により得意とする分野は違うのですが、刺す鍼、刺さない鍼という区別よりも、「この患者さんをどういう状態にすると症状がよくなるのか?」という事が大事です。

また学生さんは臨床でいかせるまでの理解は難しいと思いますが、鍼灸はきちんと効果がでること、そして刺さない鍼という軽微な刺激でも体が変化すること知り、面白いと思ってもらえたら十分だと思っています。

今は魔法のように見えていても、卒業して何年かすると必ずリンクしてきます。鍼のひとつとしてそういう世界があることを知っておいて損はないと思ってます。

さて、また7月28日にむけて準備をしていきます。

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