鍼を刺すときに大事なこと『図説鍼灸実技』

柳谷素霊先生の『図説鍼灸実技』にある鍼の刺し方について書きました。

2019年6月11日(火)

こんにちは、和歌山県橋本市を拠点に活動しております蓬庵(よもぎあん)のワダです。ブログをご覧いただきありがとうございます。

鍼を刺すときに大事なこと

『図説鍼灸実技』柳谷素霊:著より

昭和に鍼灸の発展や教育に大きく寄与された柳谷素霊先生(1906~1959年)が書かれた『図説鍼灸実技』を先日に入手しました。1948年に出版され、今は絶版となっているので古本しかありません。

『図説鍼灸実技』柳谷素霊:著 

私の生まれよりも古い本ですが、紙の色あせもなくとても綺麗な本を入手することができました。今はあまりされる方はいないかもしれませんが、古い本は蔵書印や名前を書かれていることもよくあります。

今回は蔵書印や書き込みはなく綺麗でした。

鍼の刺し方

普段に私たちがよく使っている「ゴウ鍼」といわれる刺す鍼の刺し方を書いているところに、鍼を刺すときの心持ちについて書いていました。

気海、丹田に力を入れ我無く、人無く半眼を開いて、禅定にあるという気分で刺す、刺すにあらず、入れてもらうなりという気持で鍼を扱うのである。

『図説鍼灸実技』柳谷素霊:著より引用

丹田(下腹部)に力をいれ、心静かに精神を集中して刺す。また鍼は刺すのでなくて、入れてもらうという気持ちで扱う。

また、鍼を刺すときには「刺す」という意識はなく、「入れてもらう」という心持ちをもって鍼を扱いなさいとあります。

基本のところなので飛ばして読んでいなかったのですが、読んでいてすごくいいことを書いてるなと思いました。

今の教科書ではそういったことは書いていないと思いますし、書いていても学生の頃には理解は難しいかもしれません。

丹田に力を入れる

大先輩の先生に「鍼を刺すときは肚(腹)で刺すんだ。」と言われたことが何度かあります。

言われたときは「肚でなんかどうやって刺すの!?」、「鍼を刺すのは手でしょう!?」なんて思ったことがありました。

意味を全然理解できませんでしたが、今ならなんとなく言いたかったであろうことがわかりますし、後輩にもそのように伝えています。

丹田(たんでん)って何?

では、丹田についてもう少し詳しく見ていきたいと思います。

丹田(たんでん)

丹田とは、武道や気功などを訓練するときに使われることが多いコトバですが、下腹部にあるとされる気の集まる場所のようなところです。

おへそと肛門との間にあると言われたりしますが、実際に何かがあるわけではありません。

気海(きかい)

おへその下方1寸5分にあるツボです。気の海と書くように気が集まるところです。

丹田を意識することで姿勢が安定し、上半身は余計な力をぬきやすくなります。姿勢が安定しないと刺すときに痛みがでるなど、受けてる方に苦痛をあたえることになりやすくなります。

鍼 はり 針

現在の鍼は刺しやすい

現在のステンレスでできた鍼は丈夫ですべりも良く(シリコンを塗布している場合もある)非常に刺しやすくなっています。そのため丹田を意識しなくても容易に刺せてしまいます。

しかし、かつてよく使われていた銀、金、鉄といった鍼はとても刺しにくいものでありましたし、強引に刺すと折れるリスクもありました。

ですから丹田に力をいれて集中することで、呼吸や手の動きをシンクロさせて刺していました。

今は銀の鍼を使う機会がほとんどない先生が大半ですが、一度使ってみるといかにステンレスの鍼が刺しやすいかがわかります。

養成学校でも銀の鍼で練習をしているところが多かったそうですが、14年前に私が習ったときにはもうステンレスの鍼でした。

今では使い捨てのディスポ鍼が主流となっていますが、以前は使った鍼を滅菌器にかけて針先を砥石で研いで鍼が短くなるまで使っていました。

そのため鍼を、武士の刀、不動明王の剣のように大切に扱いなさいともこの後で書かれています。

針 鍼 はり

複数社の使い捨てのディスポではなく、メンテナンスすることで繰り返し使うことのできる職人が作った鍼、ステンレス、銀、金などがあります。今は使う先生が少なくなっています。

禅定(ぜんじょう)

禅定は仏教のコトバです。

禅定(ぜんじょう)

サンスクリット語では「ディアーナ」、バーリ語では「ジャーナ」といわれる。

瞑想をしている状態、ひとつのことに集中すること、心静かに余計なことを考えず動揺しない。

おそらく、他のことやお金のことなど欲なども考えず。ただ病気の人をよくするんだと思って、鍼を刺すことに集中しなさいといっているのではないかと思います。

入れてもらうなり

鍼は強引に刺し入れるのではなくて、気の動きや呼吸をみて入れやすいタイミングやリズムを相手に合わせて刺していくものです。

そいう意味を「入れてもらうなり」というコトバで表現をしているのではないかと思います。

一方的に入れる事ばかりを考えるのではなく、そのような意識をもって鍼を扱うことはとても大切だと思います。

まとめ

短い文章なのですが細かくみていくと、とても大事なことを言っていると思います。

術者の姿勢についてはなかなか習う機会がないですが、少し姿勢を変えるだけで施術の効果が変わったりします。私も機会があれば後輩にも伝えるようにしています。

近年は鍼の単価も安くなり1本の鍼の重みを感じることが少なくなっていますが、ひとつひとつ集中して施術をしていくことがとても大切だということを言っているのだと思います。

私見も含みますが、よかったら参考にしてみてください。

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